
骨軟部腫瘍の診断はまず臨床症状、患者の年齢、現病歴、既往歴、家族歴などを詳しく聴取し、理学所見を丁寧にとることから始まる。そして次に必要充分な画像検査を行い、詳細に検討することで診断を行う。必要となれば生検を行うことにより診断を確定する。
骨軟部腫瘍の診断で重要なことは、1) その腫瘍の治療方針が経過観察のみで良いのか、積極的な治療を要するものかをなるべく早い時期に正確に判断すること、2) 積極的な治療を要すると判断した場合(一部の進行性の良性腫瘍と悪性腫瘍)、病変の進行度を正しく、迅速に評価すること。3) 一般整形外科医が診断に難渋する際は、躊躇することなく腫瘍専門医に相談することである。
以上の点を確認した上で、骨軟部腫瘍を診断する際の基本的な手順を中心に概説する。なお全体的な診断の手順は図1に示した。

近年画像診断が進歩してきたが、丁寧な問診と診察が骨軟部腫瘍診断で最も重要である。患者の年齢、臨床症状、現病歴、既往歴を詳しく聴取して理学所見をとる。
骨軟部の腫脹・腫瘤を形成する疾患は多く、腫瘍性疾患の他にも、外傷、炎症性疾患、変性疾患、代謝性疾患、神経筋疾患、末梢循環に関連する疾患、骨端症、骨系統疾患なども想定しなければならないが、これらは問診と丁寧な診察で鑑別できることが多い。骨軟部腫瘍における問診および診察のポイントを表1に整理した。また、発症年齢(表2)は例外を認めるものの、診断の一助となる。
軟部腫瘍は、ガングリオンとの鑑別が必要なことが多いが、腫瘤が関節及びその周囲の皮下に存在しガングリオンを強く疑う場合は穿刺を行っても良い。但し穿刺内容物に血液成分や固形成分を認めた場合はそのサンプルを細胞診に出し、異形細胞の有無を調べる必要がある。


悪性骨軟部腫瘍は概して検査データーに著変を示さない事が多いが時に、診断の一助となるうえに、患者の全身状態を知る上で血液・尿検査は是非行うべき検査である。また転移性骨腫瘍や転移性軟部腫瘍を疑う際には、想定する原発巣の腫瘍マーカーを調べる必要がある
近年MRIをはじめとして様々な画像診断が登場してきたが、骨腫瘍の診断では単純レントゲン写真の診断的価値は、少しも失われていない。腫瘍の占拠部位とその広がり、骨破壊の程度などを読みとる。骨腫瘍の中には非常に特徴的なレントゲン像を示すので、病理診断を待たずして診断を下しうる腫瘍も少なくない。特に骨腫瘍の場合その発生部位は、おおよそ決まっており診断する上で重要な情報源となる。単純レントゲン写真は軟部腫瘍の診断の際にも、最初に行うべき検査である。血管腫、滑膜肉腫、骨外性骨肉腫のように石灰化または骨化を伴う腫瘍を診断するためにはレントゲン写真は最も簡便な検査といえる。またレントゲン上の腫瘍陰影から、そのサイズ、骨との関係を簡便に知ることが出来る。また骨軟部腫瘍で臨床的に悪性腫瘍を疑う際には胸部レントゲンを撮影し、原発巣、肺転移巣の有無をスクリーニングする必要がある。
骨軟部腫瘍の領域では、MRIがすぐれたコントラスト分解能を有するために、病変の範囲、内部構造、神経血管との関係などをかなりの正確さで判断できるようになってきた(図2)。しかも、近年臨床症例の蓄積とともに組織型の判定ができる症例があることがわかり、現在では骨軟部腫瘍領域では不可欠な検査となっている。しかし、欠点としては1) MRIは微細な骨破壊や小さな石灰化病巣の描出には限界があること(この点ではCTスキャンの方がより優れている)2) 撮影に要する時間がCT スキャンと比較して長いため、呼吸による動きのある肋骨腫瘍は明瞭に撮影できないこと3)T1強調像、T2強調像ともに低信号となる、皮質骨、腱、空気、血流の速い血管の鑑別が困難であること、などがあげられる。
骨軟部腫瘍をMRIで評価する際、可能な限りGd-DTPA投与による造影MRIを併用すべきである。造影MRIは1)組織間コントラストの増強(腫瘍/周囲組織、腫瘍/周囲の浮腫、腫瘍/腫瘍内壊死)2)腫瘍血流 3)悪性/良性の鑑別に有用な情報を得ることができるのがその理由である。

骨腫瘍においては、CTスキャンは骨腫瘍の病変部の石灰化または骨化の有無、皮質骨の破壊の程度、海綿骨の骨破壊の状態、微細な骨膜反応、病巣の辺縁の骨硬化の状態など単純X線やMRIでは十分に描出できない骨変化を知るのに適している。また軟部腫瘍においては腫瘍内部の石灰化または骨化を知るのに非常に有用である。

悪性骨軟部腫瘍は一般に血管網の増生(hypervasucularity)、腫瘍濃染像(tumor stain)、動静脈短絡(A-V shunt)、動脈狭窄、管径不同像、動脈閉塞像などのいわゆる腫瘍血管の存在が認められることが多いため腫瘍の良悪を診断するために以前は良く用いられた。しかしMRIをはじめとする低侵襲な検査の進歩した現在、その診断的価値は限られるようになってきた。血管系腫瘍の診断の際は当然のことながら有用である。
骨シンチグラフィーは99mtechnetiumj(Tc)で標識されたリン酸化合物であるmethylene diphosphonate(MDP)やhydromethylene diphosphonate(HMDP)を静注した後にその薬剤が集積した部分をガンマカメラで観察する検査法である。骨形成が盛んに行われている部位に集積する。良性骨腫瘍、転移性骨腫瘍を含む悪性骨腫瘍で集積を示す。病変が多発性であるかどうかの全身検索や、原発性悪性骨腫瘍では局所におけるスキップ転移の有無の診断に重要な情報を与えてくれる。但し脊索腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫などでは集積を示さないことがあり注意が必要である。また骨外集積を示す腫瘍性疾患としては骨肉腫の肺転移、ある種の軟部腫瘍(神経原性腫瘍、脂肪肉腫、リンパ腫、骨外性骨肉腫など)がある。
タリウムシンチグラフィー(201Tlシンチグラフィー)は、骨軟部腫瘍領域では良悪の鑑別にある程度有効と考えられている。集積がないか弱い場合には良性または低悪性度の可能性高く、強い集積を認める場合には悪性腫瘍の可能性が高いと考えられている。
しかしMRI、CTスキャンの画像診断としての有用性が確立しつつある現在、201Tlシンチグラフィーの診断的価値はそれほど高くなく、化学療法や放射線療法の治療効果判定を行うのに有効である。
ガリウム(67Ga)シンチグラフィーは、悪性リンパ腫で強い集積を認める。骨軟部腫瘍の良悪の鑑別にある程度有効と考えられているが、診断的価値は高くない。炎症性疾患との鑑別が必要であり、注意を要する。
超音波検査は腫瘍の全体像の把握などはMRI より適しているとは言い難いが5mm程度の小腫瘤でも描出が可能でありことや、なれれば外来にて簡便に検査できることから、触診での確認が困難なOccult ganglionや神経鞘腫などの嚢胞性病変腫瘍の検索に有用である。また針生検を超音波下で施行することにより、腫瘍の適切な部分への穿刺針の到達が容易となる。
骨軟部腫瘍において臨床所見、画像所見で悪性を疑う時、あるいは診断が得られない場合は生検を行う。これによって良悪性の鑑別、組織学的悪性度の評価ができ、stagingに基づいた治療方針が決定される。我々は軟部腫瘍の場合には外来にてAllegiance社製のTru-Cut Biopsy Needleを用いた針生検を行っている。但し臨床所見、画像から神経鞘腫など神経系腫瘍を疑う場合、針生検は注意を要する。骨腫瘍の場合でも骨皮質が非常に被薄化している際には針生検を試みてもよい。針生検が不可能な症例、針生検で充分な標本が採取出来ず診断が不確実であった症例、または臨床診断、画像診断と針生検の結果に解離が認められる場合は切開生検をおこなう。切開生検はなるべく全身麻酔下(下肢であれば腰椎麻酔下でも可)で行うこととしている。局所麻酔で生検を行った場合、注射針にて腫瘍を穿刺しながら局所麻酔薬を注入する事により周囲に腫瘍細胞を播種させてしまうおそれがあるからである。また生検術によって展開された術野は腫瘍細胞がばらまかれることになるため、後の外科的治療の妨げとならないように生検の皮切の部位(つまり進入経路)の決定は計画的に行う必要がある。
組織診断の基本はあくまでもヘマトキシリンーエオジン(HE)染色標本であり、検体は採取後速やかにホルマリン固定すればよいが、電顕検索には新鮮材料を電顕固定液に、グリコーゲン顆粒の証明には純アルコール固定液が必要であり、事前に病理医との密接な情報交換を行っておく必要がある。また、骨腫瘍の切開生検の際、病理に提出する組織は柔らかな腫瘍組織と、骨の混じった硬い組織とはなるべく分けて病理医に提出する事をすすめる。骨混じりの組織は脱灰操作が必要となるため、標本作製に時間がかかる上に、脱灰操作によりH-E染色での染色性が消失したり、免疫組織学的染色をする際に抗原性が失活することがある。それに対して柔らかい腫瘍組織は固定後速やかにH-E染色標本を作製でき、免疫染色する際の抗原性も良く保たれていることが多い。病理医が常駐している病院では術中迅速診断を行い、手術中に腫瘍組織が確実に採取されていることを確認すべきである。また迅速診断により暫定的な診断を知っておくことにより、生検後最終病理診断がでるまでのあいだに検査、治療計画がたてやすくなる。術前の鑑別診断に感染性病変があがっている場合には組織の細菌培養も同時に行う必要がある。
骨軟部腫瘍はその臨床経過、画像所見、病理所見が多彩であり、時にそれを専門にしている臨床医、放射線科医、病理医でさえ、しばしばその診断に難渋する。近年分子生物学の進歩により、骨軟部腫瘍の原因遺伝子が同定され、病理組織学的に診断困難な症例における遺伝子診断の有用性が認識されつつある。詳細は他項に譲るが、現在まで報告されている原因遺伝子は、そのほとんどが染色体相互転座の結果生じる融合遺伝子であり、滑膜肉腫(SYT-SSX)、ユーイング肉腫/PNET(EWS-FLI1など)、粘液型脂肪肉腫(TLS-CHOPなど)、骨外性粘液型軟骨肉腫(EWS-CHNなど)、隆起性皮膚線維肉腫(COL1A1-PDGFB)などの診断に有用である。これら遺伝子診断を行うには、採取したサンプルをすぐに液体窒素で凍結させ、その後マイナス80 度で凍結保存する。適切に保存された標本からmRNAを抽出し、融合遺伝子切断部を挟むようにプライマーを設定し、RT-PCR(reverse transcriptase polymerase chain reaction)法を行うことにより相互転座により生じるキメラ遺伝子産物の有無を検出する。この遺伝子診断は微妙な問題を含むため、生検の前に充分なインフォームドコンセントが患者とのあいだで必要なことは言うまでもない。遺伝子診断の有用性は認識されつつあるが、現在のところ限られた研究施設でのみ行われているに過ぎず、またその検査費用は現行医療保険制度では認められていない。今後より全国的な検査システムの構築と制度的裏付けが待たれている。
骨軟部腫瘍はしばしば画像および病理組織学的診断に困難を極めることがある。原因は1) 頻度が低いため一般臨床医、病理医にとって不慣れな分野であること2) 間葉系の腫瘍はその発生起源をもとに分類されているが、実際は多彩な組織形態をとることが多いこと3)腫瘍の組織分類自体が未完成であること などが考えられる。したがって正確な診断の為には充分な臨床情報が必要であり、整形外科医と臨床病理医の密接な情報交換が必要である。それでも解決できない場合は腫瘍専門とする整形外科医、及び病理医に積極的にコンサルトする事をためらってはいけない。
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軟部組織に発生する間葉系由来の腫瘍性病変と定義できる。
良性軟部腫瘍と悪性軟部腫瘍(肉腫とも言う)とは治療方針が大きく異なる。
良性腫瘍は、特に症状がない場合は経過観察となるが、疼痛を有する場合(グロームス腫瘍、血管腫、など)は手術適応がある。腫瘍を辺縁切除する。神経鞘腫の場合は正常の神経を傷つけることのないよう注意しながら核出術を行う。
また、脂肪腫は良性腫瘍であるが、10 cmを超えるような巨大腫瘍の際は、脂肪腫様の高分化型脂肪肉腫の可能性があるため、やはり切除ずることが望ましい
軟部肉腫に対して、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、DTIC、シスプラチン、イフォスファミド、エトポシドが使用され、これらを組み合わせた様々な投与スケジュールが考えられてきた。
横紋筋肉腫、骨外性ユーイング肉腫、リンパ腫は抗癌剤に対する反応性が一般的に非常に良いために、診断が着いた時点で早急に化学療法を開始する。
我が国において、成人発生の紡錘形細胞肉腫に対して有効性が確認されて保険診療での使用が認められている抗腫瘍薬はアドリアマイシンとイフォスファミドのみである。欧米では、ゲムシタビン+ドセタキセルも標準的治療薬として使用されている。滑膜肉腫は化学療法が有効な場合が多いので、可能な限り行うのが望ましい。しかし、未分化多形肉腫、血管肉腫などには無効のことがも多い。患者との充分なインフォームド・コンセントが重要である。
近年、分子標的治療薬であるVEGFR、 PDGFRおよびc-Kitに対して阻害作用を示すマルチキナーゼ阻害剤であるパゾパニブが,2012年に使用可能になった。悪性軟部腫瘍に対する初めての分子標的治療薬であり、今後さらにその有効性が検証されるだろう。
脂肪肉腫は脱分化型脂肪肉腫、粘液型脂肪肉腫に対しては抗癌剤の有効性を確認した報告はあるが、高分化型脂肪肉腫は元来予後が良いため、抗癌剤治療は必要ない。
腫瘍の取り残しの無いよう、腫瘍広範切除術を原則とする。四肢に発生した場合、可能な限り患肢温存術を行う。骨にも進入している場合には骨も切除し、必要に応じて腫瘍用人工関節を用いる。腫瘍が神経から発生している場合には神経も合併切除する必要がある。大血管を巻き込んでいる場合には、切断術を選択せざるを得ないこともある。
腫瘍が神経血管に接している場合には、手術前に神経血管との距離を広げる目的で放射線療法を行うことがある。また、手術療法だけでは再発を来す可能性が高い症例に、術後、補助的に放射線療法を行うことにより局所再発を抑制することが出来る。ユーイング肉腫、横紋筋肉腫は放射線感受性が高いため手術と併用することを推奨する報告もある。
画像または生検により良性骨腫瘍および腫瘍類似疾患(以下良性骨病変)であることが確定したら次に治療法を慎重に検討する。良性骨病変は、必ずしも手術的治療が必要というわけではない。骨軟骨腫、内軟骨腫、線維性骨異形成、骨幹端部線維性骨皮質欠損、骨内脂肪腫のように偶然発見されるものが多いが、これらは無症状であれば経過観察のみで対応する。また好酸性肉芽腫は生検で診断さえつけば多くの病変は自然治癒する。しかし表1に示したような症例は積極的な手術治療を考慮することが望ましい。なお、病的骨折後に手術を行う際は、ギプス固定、シーネ固定など行い、仮骨が形成されてから手術を行った方が手技的に容易である。

充実性腫瘍や嚢腫の場合は腫瘍掻爬術後に骨または人工骨移植を行う。
骨皮質への開窓
骨皮質に達したら開窓をおこなう。長管骨への開窓は力学的な強度を保つためになるべく楕円形に開窓をおこなう。開窓の長軸方向の長さは骨腫瘍を完全に掻爬できるよう十分確保すべきであるが、開窓部の幅は術中術後の骨折の危険性を避けるために全周の1/3を超えないようにする。開窓方法は、細いサージアトームまたはK-ワイヤーで小孔を開窓の部の形に4-5mm間隔で作製し(図1―A)、その小孔を骨ノミまたはボーンソーにて慎重につなぐのがもっとも安全である(図1―B)。骨皮質が著しく菲薄化している場合には尖刃にても開窓が可能である。

掻爬
骨病変の再発を防ぐためには十分な掻爬が必要である。特に易再発性の骨巨細胞腫、軟骨芽細胞腫、骨線維性異形性、類腱線維腫などは徹底的な掻爬が必要である。掻爬の際はリュエル、髄核鉗子、鋭匙を使用する。特に鋭匙は様々な形と大きさのものを準備する。腫瘍壁に隔壁が存在している時は、十分な掻爬ができるようにサージアトームや鋭匙で隔壁を削り取る(図1―C)。
開窓部近傍の骨皮質内側面も掻爬が不十分となりやすい部位であり注意を要する。正常骨組織が露出するまで掻爬を行うのが基本である。なお術前の検討で悪性腫瘍の可能性が少しでも疑われた場合は、術中迅速病理診断で良性腫瘍の診断を得てから掻爬を開始することが望ましい。単発性骨嚢腫の掻爬は、腫瘍壁に存在する膜様組織を確実に切除し、近位または遠位の嚢腫壁を破砕し正常骨髄と嚢腫を連絡させることが再発防止のためには重要と考えられている。

掻爬後の骨欠損部への骨または人工骨移植
好酸球性肉芽腫や手指の内軟骨腫は腫瘍掻爬のみで骨形成が促進されるので必ずしも骨移植、人工骨移植は必要ではないが、骨欠損部が大きい場合には骨または人工骨にて充填することが望ましい。以下に様々な骨充填材の特徴を示す。
・自家骨:良好な骨形成が期待できるので現在までGolden standardとしてもっとも一般的に行われてきたが、採取できる自家骨の量には限りがある上に、採骨部の疼痛や神経障害などの合併症が少なくないことから、近年は人工骨へと主流が移りつつある。しかし、腫瘍の進展により軟骨下骨が欠損しているような症例では、軟骨下骨欠損部へは自家骨を充填することを勧める。
・同種骨:欧米では一般的に行われているが、我が国ではその供給体制が十分機能しておらず、また病原伝播性の問題も完全には解決されていないことから一般化していない。
・PMMA骨セメント:十分な初期強度を得られることから早期社会復帰に有利と考えられている。また骨セメント硬化時に発生する重合熱による残存腫瘍の殺細胞効果を期待できる。骨との親和性は低い。
・ハイドロキシアパタイト(水酸アパタイト):我が国では1980年代なかばより厚生省より医療用具として認可され、自家骨移植あるいは同種保存骨移植にかわるものとして、整形外科領域に広く応用されている。ハイドロキシアパタイトは骨との親和性高く化学的に骨と結合する(図2)。海綿骨の微細形態を模倣し多数の気孔をもたせた多孔体と気孔をほとんど有さない緻密体があり、さらに粉末状、顆粒状、ブロック状のものが各社より販売されている。ハイドロキシアパタイトは一般的に気孔率が高くなるほど圧縮強度、曲げ強度は低下するが、骨芽細胞のScaffold(足場)としての機能は促進される。より高い骨伝導能を有した気孔間連通孔を有する製品も開発され良好な治療成績が報告されている。

・リン酸カルシウム骨ペースト:粉剤と液剤の配合比の調節によりペースト状あるいは粘土状で使用することができるために、簡便で操作性が良い。ペースト状で充填する場合は添付のシリンジを用いて充填する。硬化後、生体内で水和反応によりハイドロキシアパタイトに変化する。圧縮強度、生体親和性は高いが材料内への骨侵入はなく緻密体ハイドロキシアパタイトと同じ状態と考えられる。
・リン酸三カルシウム(β-TCP):圧縮強度が極めて低く操作性も悪いが、ハイドロキシアパタイトに比べ生体内で分解、吸収を受けやすく、再生骨に置換されると期待されている。
・ハイドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム混合体:ハイドロキシアパタイトとリン酸三カルシウムの吸収性を併せ持つことを目的として開発された。生体内では一部が吸収され骨に置換される。
内固定術の併用
大腿骨や脛骨などの荷重骨で、病的骨折を生じた症例や、術後の骨折の可能性が極めて高い症例には腫瘍掻爬後プレート、髄内釘、ヒップスクリューなどで内固定を行った後に骨移植、人工骨移植を行う(図3)。内固定材は術後MRIを撮影することを想定してチタン製の固定材を選択する。内固定の併用により早期の荷重が可能となり骨形成の促進が期待される。

隆起性の病変である骨軟骨腫は無症状であれば手術治療は必要ない。しかし、急速な増大傾向を示す症例や疼痛を有する症例は切除術の適応となる。切除は骨軟骨腫の基部から骨ノミで切除するようにする。再発を防ぐためには軟骨帽を完全に切除することが重要である。小児の場合は成長軟骨を損傷しないように気をつける(図4)。また腓骨近位端の骨巨細胞腫や肋骨の線維性骨異形成のように再建を必要としない腫瘍の場合は切除術のみ行う。

類骨骨腫はnidus(ナイダス)といわれる骨内の小病変が疼痛の原因となっている。イメージを用いて病変部直上の骨皮質にK―ワイヤーでマーキングした後、病変に向けてサージアトームで骨皮質を慎重に削る。病変部に到達したら小鋭匙にて病変部を徹底掻爬する。現在、三重大学では低侵襲治療を目標にしており。IVR科とタイアップしてTガイド下のラジオ波焼灼術または凍結療法を行い、良好な治療成績を挙げている。
単発性骨嚢腫に対する治療は、掻爬術と自家骨移植が従来行われてきたが、近年は人工骨の発達とともにハイドロキシアパタイトなどを充填することが多くなっている。しかし、その再発率が30%-50%と高いために、様々な手術術式が考案されている。
骨巨細胞腫のように局所で骨破壊的な進展を示す腫瘍の中には、掻爬+骨移植(または代替骨移植)では対応できないほどの高度な骨破壊や、関節機能障害を生じている症例がまれに存在する。そのような症例は腫瘍用人工関節が適応となる。悪性腫瘍の場合と異なり、良性骨腫瘍に行う人工関節は筋肉、靱帯の切除が少なくてすむために術後患肢機能は良好であるが、術後合併症(人工関節のゆるみ、破損、感染など)のリスクは大きい。
骨腫瘍の原発性骨悪性腫瘍は非常に稀な疾患である。そのなかでも骨肉腫の頻度がいちばん高いがそれでも、我が国の粗罹患率は人口10万人に対して男0.7、女0.5程度である。次に軟骨肉腫、ユーイング肉腫と続く。好発年齢は、骨肉腫およびユーイング肉腫は10代の学童期、青少年期であるが、軟骨肉腫は30歳以降の成人に発症する。
原発性悪性骨腫瘍の治療成績は1980年頃より導入された化学療法の進歩により飛躍的に向上してきた。骨肉腫の場合、1980年以前の5年生存率は10%程度という悲惨な状況であったが、近年抗癌剤の多剤併用療法が行われるようになり5年生存率は70%程度にまで改善してきた。治療開始時遠隔転移のない軟骨肉腫の5年生存率は70%である。しかしユーイング肉腫は依然として予後は悪く50%程度である。
現在、骨肉腫、ユーイング肉腫に対する抗癌剤治療の有効性は確立されており、術前化学療法→手術(腫瘍切除)→術後化学療法の治療プロトコールに沿って治療することが標準的治療とされている。
骨肉腫、ユーイング肉腫に対しては化学療法を行うのが原則である。但し患者がの高齢者や、腎障害、肝機能障害、などの合併症を有する場合は、抗癌剤の量を減らすことが多い。時に、抗ガン治療を断念せざるを得ない事もある。
骨肉腫に有効な抗癌剤はアドリアマイシン、シスプラチン、イフォスファミド、メソトレキサートなどであり,これらを組み合わせた様々な投与スケジュールが考えられている。ユーイング肉腫の場合は上記の抗癌剤のほかに、ビンクリスチン、シクロホスファミド、アクチノマイシンD、エトポシドなどが使用される。軟骨肉腫には抗癌剤は有効性に乏しいと考えられている。
化学療法に感受性の高い骨肉腫やユーイング肉腫の場合は、術前化学療法を終了した後に、病巣を外科的に切除する。抗癌剤抵抗性の軟骨肉腫などは、化学療法は行わずに、診断確定後に速やかに手術計画を立てるのが一般的である。
四肢に発生した原発性悪性骨腫瘍の治療は、1980年以前は切断術を行うのが一般的であったが、抗癌剤療法の発達、画像診断技術の進歩、手術手技の進歩、腫瘍用人工関節の発達により、今日では、患肢温存術が標準的治療法となっている。
原発性骨悪性腫瘍の場合は、腫瘍の取り残しの無いよう、腫瘍から充分な切除縁を確保した腫瘍広範切除術を原則とする。
広範切除後の骨欠損部の再建は、腫瘍用人工関節置換術あるいは生物学的患肢再建法を行う。
腫瘍用人工関節は我が国では現在のところ、上腕骨近位、上腕骨遠位、大腿骨近位、大腿骨遠位、脛骨近位に対するものが使用可能となっている。下肢に使用した場合は、手術後早期に荷重歩行練習が可能であり、優れた患肢機能を得ることが出来る。しかしその反面、手術後の感染、人工関節のゆるみ、人工関節の破損、などの問題が完全に克服されたとは言えず、課題を残している。また、患者がスポーツ選手の場合は、義肢装具の著しい進歩に伴い、高い運動能力を維持できることから、むしろ切断術を選択する場合もある。
腫瘍切除後に生じた骨欠損部位に生体由来の組織を移植することにより再建する方法である。我が国では特にこの方面の再建方法の研究が進んでいる。いずれの方法もうまくいった場合は良好な患肢機能が得られるが、合併症が多く、機能獲得までに数回の手術を要することがあるのが欠点であり、その適応は限られているのが現状である。
・自家骨移植:欠損部が大きい場合は血管柄付き自家骨移植が必要となる。Donor siteに骨欠損が生じること、技術的な困難さ、治療期間が長いことなどが問題である
・同種骨移植:欧米ではかなり一般化しているが、移植骨が吸収されることも多く、長期成績は安定していない。我が国では供給体制の問題もあり、普及していない。
温熱処理骨:切除した腫瘍を含む骨組織を、加温処理した後、元の部位に再移植する方法。70℃、30分処理するパスツール処理とオートクレーブ処理するオートクレーブ処理骨が存在するがオートクレーブ処理骨は骨の強度、骨再生能に問題があり、最近は行われていない。
・放射線処理骨(術中体内照射、体外照射):手術中に腫瘍を切除することなく手術室で病変部に高容量の放射線照射を行う術中体内照射と、切除病変に放射線照射を行った後、再度体内に戻す術中放射線体外照射自家骨移植術がある。我々は術中放射線体外照射自家骨移植術により良好な成績を得ている。
原発性骨悪性腫瘍ではユーイング肉腫が放射線に対する感受性が強く、効果が高いことが知られている。骨盤、脊椎など手術が困難な部位に腫瘍が発生した場合は放射線治療の適応となる。骨肉腫では可能な限り手術的に切除することが推奨されているが、再発例には放射線治療を行う場合がある。一般的に軟骨肉腫に対して放射線治療は無効である。
近年、悪性腫瘍に対する治療の進歩は著しく、担癌患者の生命予後は改善してきたが、転移性骨腫瘍の頻度は増加傾向にあり、一般整形外科医であっても日常診療でしばしば遭遇する。特に乳癌、前立腺癌、肺癌は我が国においてその発生数は増加傾向にある上に骨転移を来しやすい腫瘍でもあり、適切に治療することが重要である。
転移性脊椎腫瘍に対する治療
無症状である場合はビスフォスフォネート製剤であるゾレドロン酸(商品名ゾメタ)または、RANKLに対する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデノスマブ(諸品名ランマーク)を投与する。近年各種癌の抗癌剤治療の進歩により、骨病変の進行が抗癌剤により抑制されることも多い。しかし背部痛、腰痛などの疼痛が存在する場合にはMRIで精査の上、早急に放射線治療を併用することが望ましい。
また、下肢の脱力など脊髄圧迫による麻痺症状が存在するようであれば、患者の全身状態などを考慮した上に椎弓切除術などの手術的治療を行う。
下肢長管骨の骨転移に対する治療
転移性骨腫瘍の中でも、下肢長管骨転移は、著しいQOL低下の原因となるため、適切な治療を行うことが重要である。転移性骨腫瘍の切迫骨折、病的骨折に対する手術は、厳密な意味での緊急性はないが、患者のQOLのことを考えると、なるべく早く(準緊急的に)手術を行うのが望ましい。
転移性骨腫瘍の手術は疼痛をコントロールし、運動機能を回復させQOL低下を防ぐことにある。従って”cure” よりも”care”を目指す緩和療法的な意味合いが強い。しかし下肢の長管骨の場合、いずれ骨折を来す可能性が高いので、発見したら積極的に外科的治療を考えるのが正しい。適切に骨転移をmanagementするためには、以下のような原則で治療を行うべきだと考えている。1) なるべく早く治療にとりかかる。2) 可能な限り外科的に治療する。3) 患者の状態は次第に悪化していくことが予想されるので、再発による再手術する必要のないよう手術術式は必要かつ十分な方法を選択する。4) 外固定が必要となるような術式は選択しない。5) 必要であれば術後に放射線治療を追加する6) 入院期間の短縮をめざす。
手術手技の選択は意見の分かれるところであるが、われわれは、病変部位や全身状態や予後などを踏まえ総合的に判断し、術式選択を行っている。術後は、いずれの術式でも、ドレーンを抜去したら一週間以内に歩行練習を開始し、なるべく早期に元の生活に戻るようにしている。病巣が残存する術式を選択した場合は、症例に応じて術後20~40 Gyの放射線照射を行う。脊椎転移など合併している場合にはその部位の放射線治療を同時におこなう。
来院時原発不明の場合、転移性骨腫瘍の原発巣の診断は、腫瘍マーカーの数値、胸部および腹部CTスキャン、内視鏡を用いた上部および下部消化管検索などを行うが、骨折をしている場合には、画像検査は患者に多大な苦痛を強いることになるので、侵襲的な検査は術後にすることが望ましい。切迫骨折の時でも全身検索をあまりにも長期間にわたって進めると、全身状態の悪化を招くと共に、検索中に骨折を来してしまうことがあるので、なるべく短期間に検査を済ませるようにする。